「人間百景〜ビジネスの発想を学べ!〜」  
毎週土曜日発行の日刊ゲンダイに〈いからしひろき〉名義で連載中です。

今回は、銀座クラブ「Nanae」オーナーママの唐沢菜々江さんをインタビューしました。

ビジネスの発想を学べ!
“銀座で最も勢いのある”クラブのママ コロナとどう闘う?
公開日:2021/02/14 06:00 更新日:2021/02/14 06:00


日本を代表する社交場、銀座。バブル期には3000軒あったとされるクラブは今や半分ほど。そんな状況でビル一棟を丸々借り上げ、総工費約5億円をかけた新店をオープンして話題となったママが唐沢菜々江さんだ。

しかし、座るだけで4万円の超高級店を経営する“銀座で最も勢いがある”ママにもこのコロナ禍は相当な痛手だったでしょう。2度目の緊急事態宣言が出された直後の1月半ばに直撃したところ、意外やあっけらかんと、記者にこう言いました。

「第3波になるんでしたっけ? こんなに長引くとは思っていませんでしたけど、仕方ないですよね。売り上げも100%に戻るとは思っていませんが、いろいろなことを考えながらやっていこうと思います」

詳しくは記事を読んで頂きたいですが、まー、とにかく苦労人。

水商売のキャリアは18歳の時に地元春日部のスナックで幕を開けました。たまたま知り合いが勤めていて、遊びに行ったら「週1回でいいから」と頼み込まれたそうです。

「一人っ子で知らない人と話をするのは苦手でしたが、どうしても断れなくて……」

当時夜学に通いながら、昼は保険の外交員や移動パン屋など別の仕事もしていました。水商売は体力的にも厳しく、1年足らずで足を洗ってしまいます。

しかし21歳の時、再び夜の世界に舞い戻りました。

なぜか?

「結婚、出産したのですが、夫が詐欺に遭い、莫大な借金を抱えてしまったんです。他にもシロアリ駆除の費用とか、身内の借金の肩代わりとか、合計するととても地道に働いていては返せない額。それで仕方なく産後2カ月で復帰することにしたんです」

人の良い性格が招いてしまった不運。しかしそれが今の成功への入り口でもあったのだから人生は皮肉です。

本人もこう言っています。

「あの時の苦労は、ママになるためだったのかもしれませんね」

苦労しているからこそ、窮地の時の身の振り方は良く知っています。1番はピンチを利用することです。

コロナ禍でクラブは当然接客業。営業も時間短縮です。本来夜8時から開く店が、8時まででは稼ぎになりません。

でも指をくわえて嵐が過ぎるのを待っているようでは、銀座のママは務まりません。

毎日のように融資や助成金の手続きなど金策に駆け回るだけでなく、リアルでダメならネットとばかりにユーチューブやSNSによる発信に力を入れたのです。

「ネットによる発信は以前からやっていました。銀座は格式が高すぎる、厳しいというイメージがあり、なかなか働き手が集まらない中、多くの女性や黒服などのスタッフが来てくれるのはSNSのおかげです。昔はそうしたものはNGというのが銀座の不文律でしたが、もう時代的に(内情を)隠し切れないと思うんですよね。じゃあうちが先陣を切って、逆に利用するつもりで突き進んで行こうと思って」

今やチャンネル登録者数11万人の人気ユーチューバーです。

銀座の現役ママが人生相談やメーク指南、クラブの裏側紹介、プライベート密着などの動画を次々に上げれば話題にならないわけがありません。

昨年は人気女性ユーチューバーの「てんちむ」が入店し、売り上げにも貢献しました。2度目の緊急事態宣言が発せられた後も、ここぞとばかりに生ライブ配信やオンラインクラブの運営など“デジタルシフト”にぐいぐいと舵を切っています。

先輩のママからは「やり過ぎよ」と叱られることもあるといいます。確かに古き良き銀座の伝統を壊しているようにも見えますが、根底には革新ママなりの銀座観と銀座愛があります。

愛すればこその、破壊。

うーん、なんかカッコいいな。

いつか、取材ではなく、自腹で席に座れるように、がんばります!





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