群馬県沼田市の「老神温泉」へ行って来ました。

「ろうじん」ではなく「おいがみ」と読みます。

かつて「ろうじんじゃないぜ」という自虐的なキャッチコピーのポスターがあったそうですが、それくらい温泉大国群馬県では知る人ぞ知るマイナーな温泉地と言えます。



老神という地名の由来は、この地方に残る伝説です。

どんな伝説かというと──その昔、赤城山の神(ヘビ)と日光男体山の神(ムカデ)が戦った時、弓で射られた赤城山の神が赤城山山麓に矢を突き刺すとたちまちお湯が沸いてきて、赤城山の神がそのお湯に傷を浸すとたちまち治り、男体山の神を追うことができた。そのため「追い神」と呼ばれるようになり、それが「老神」になった──のだそう。

よく猿やキジが傷を癒した温泉の話は聞きますが、大蛇(しかも神さま)というのは……

スケールがでかい!

そんな壮大な伝説の残る温泉地。一時は東京の奥座敷として栄えた時期があったものの、今だにバブルの後遺症から立ち直れず、温泉街のあちこちに廃墟と化したホテル、旅館、飲食店が点在しています。

最初はあまりの荒みっぷりに涙がちょちょぎれそうでしたが、翌朝早く起きて、じっくり歩いて見て回ってみると、これだけの数の廃墟が一つのエリアに残っているのは珍しい。

しかも当時の調度品や看板などがそのまま残っており、いわば貴重な「昭和遺産」がズラリ、なのです。

古い居酒屋や商店街など古いモノが好きな筆者は、朝っぱらから廃墟の写真をバシバシ撮りながら、「うぁ〜」「すげ〜」を連発。

地元の人は「変な奴が来た」と警戒したでしょうが、廃墟マニアには感嘆の声必至の垂涎スポット。

温泉街をぐるりと歩いて回るので、なかなか良いウオーキングになります。



そこで今回は、独断と偏見で厳選した「老神温泉のベスト廃墟5」を発表!


第5位「朝日ホテル」
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観光協会・温泉組合から川へ向って歩いて行く途中、老神様をまつる赤城神社の隣で、デーンと立っているのが「朝日ホテル」跡です。

“SINCE1911”と看板に書いてあるので、かなりの老舗です。廃虚投稿サイト「廃墟検索地図」によれば、2009年に廃業したようです。

かつて訪れたことのある人のブログによると、7階に大浴場、10階に露天風呂があり、大浴場は防水畳が流し場一面に敷かれているなど、なかなかバブリーな感じだったようです。

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門の向こうに何やら岩のようなオブジェが見えます。ちょっと入ってみましょう。

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玄関前にはママチャリが放置されていました。

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「a&g」って何なんですかね? 何かの広告でしょうか。民泊はb&bですけどね。

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無残にもASAHIの部分だけ剥ぎ取られています。せめて名前は晒したままにしたくないという元オーナーの気持ちの表れでしょうか……。

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客室を見上げると、誰かがこちらを見おろしているような……。


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岩のようなオブジェに到着。看板には老神のシンボルである「蛇」が描かれています。

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どうやらエントランスのファサードだったみたいです。発泡スチロールでできていました。

位置関係、見た目ともに、良くも悪くも目立つ、老神温泉のランドマーク的な廃墟です。


第4位「ホテルニュー老神」
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朝日ホテル跡を右に行けば川があり、「金龍園」や「東秀館」など源泉かけ流しの良い宿があります。ですが、廃墟目当てなら左に舵を切りましょう。お土産屋や小さい旅館が並んでいますが、いずれも廃墟になっています。その並びにある一際大きな廃旅館が「ニュー老神」です。

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大きなトラックが入り口脇の敷地内に止まっているのをみると、荷物などを整理している最中なのかもしれません。

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なんとなく作業してる途中のような雰囲気。

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玄関が開いていましたので、中をちょっと覗かせてもらいました。ロビーはがらんとしていましたね。奥は渓谷で、ガラス窓越しに見下ろせそうです。相当景色が良さそうですね。

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玄関の両脇には、これでもか!ってくらい旅行会社や観光バスのプレートが貼ってありました。

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団体客全盛の頃は名誉の勲章だったのでしょう。個人客中心の今となっては、墓碑銘にも見えます。

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入り口にあったカエルの置物。老神のシンボルは蛇。蛇に睨まれたカエル……なんてシャレにもなりません。

場所は一等地だけに、リゾート会社が買い取って再生されるのか、何か別の施設に再利用されるのか? 気になるところです。


第3位「東東ラーメン」
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「ようこそ老神温泉へ」と書かれたゲートの近くにたくさんの飲食店が並んでいます。居酒屋や射的屋さんもありましたが、営業しているようには見えません。かつては温泉街の目抜き通りとして、多くの浴衣姿の客がそぞろ歩いていたのでしょう……。そんな中で、気になったのが、こちらの「東東ラーメン」です。

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民家かな?と思ったら、中華屋さんでした。奥にはスナックのような建物も併設されています。

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ガラスごしに中を覗くと、当時のメニューがまだかかっていました。焼ソバ700、味噌ラーメン800、チャーシューメン800円、正油ラーメン600円ときわめてシンプル。どんな味だったのてしょうか。一度食べてみたかったですね。


第2位「見晴荘」
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場所的には温泉街の外れ。一見営業中かと思いましたが、人気は無く、しばらく使われていない感がプンプンします。

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玄関の前には落ちたクリが散乱。どう見ても人の出入りがあるとは思えません。

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なのに暖簾がかかったままです。しまう余裕もなかったのでしょうか。

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中を覗いてみると、中にも暖簾がかかっています。もしかして営業中?

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これは池? たんに水がたまっているだけ? 

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女性が好みそうな、ちょっと良さげな雰囲気です。

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いついた猫が、こちらをじっと見ていました。

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露天風呂が自慢だった様子。

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美味探訪の文字の横の貼り紙には、「あるのがふしぎ! ぶどうエビ、ノドグロ、生甘エビ、活カニ」の文字が並びます。わさわざ群馬の山奥で海鮮?と思いますが……「当宿ではおいしい物をお出ししたいだけです」というメッセージが泣かせます。


第1位「美人座」
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ありましたよ! 温泉街といえばストリップ小屋です。もしかしてまだ現役? というくらい手付かずのまま残っています(まさか営業中じゃないよね?)

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夜7時開演。2500円は安いのか?高いのか?

いずれにせよ、温泉地が男たちの安易な慰安の場だった時代の「負の遺産」と言えるでしょう。

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いかがでしたでしょうか?

大きいホテルや旅館となると解体するのも大変。だからそのままにしてるのでしょうが、いっそのこと
廃墟ツアーやライトアップでもして、観光資源にしてしまってはどうですかね?

いや、ふざけてるわけじゃなくて。

温泉が好きだからこそ、なんとか元気なってもらいたい。

日本にはこれだけたくさんの温泉地があるのだから、いろんな集客の仕方があっていいと個人的には思います。

(実は人を通じて組合関係者には提案済み。まんざらでもないようで、果たしてどうなることやら!)

なお、老神温泉では、現在14軒の旅館、1軒の日帰り入浴施設(温泉組合加盟)が営業しています。

源泉は15本あり、それぞれの施設で使い分けられていて、施設ごとに泉質が異なります。

なので、温泉組合では「湯めぐり手形」というのを発行していて、1500円で組合加盟施設のお風呂を3か所まで入浴できます。

私も利用して3か所+宿の風呂の計4か所に入ってみたんですが、大きめのところも小さめのところも源泉かけ流しの所が多く、基本は単純温泉というあっさりした味わいの温泉ながら、川のこちらと向こうでは微妙に香りが違うなど、温泉の醍醐味を味わえました。混浴が多いのも歴史がある証拠で、風情があります。

廃墟ウオーキングの後は、ぜひ老神温泉の源泉かけ流しのお湯で癒されていただければと思います。

「老神温泉旅館組合」公式サイトはこちら

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