先日、プレスツアーで伊豆湯ヶ島温泉にある落合楼村上という旅館に泊まってきました。

江戸時代から続く老舗で、昭和8年に建てられた木造建築の9割が有形文化財に登録されている、伝統と格式ある伊豆きっての名旅館です。

存在感のある表玄関……
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伝統美に溢れた館内……
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趣向をこらしたお風呂など、そのどれもが一流。
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一時期は経営不振で閉鎖されましたが、15年前に後を継いだ現当主の村上さんが見事に立て直しました。

もちろん料理も一流。

京料理のような上品さを持ちながら、伊豆の素材、伊豆らしい味付けを忘れず、”伊豆に泊まりにきた感”をしっかりと味わせてくれます。
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伊豆名産のワサビを使った料理も多数。
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これは、ワサビの茎の醤油漬け。

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えーと、これは、なんだったっけ? マスカルポーネチーズと麹味噌だったっけな。
あしらわれている葉っぱがワサビの葉というのは確かです(笑)

でもやはり、一番印象に残ったのが、お造りに添えられていた伊豆の生ワサビ、そのものです。
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これがまたクリーミーで、辛さの中に甘みがあり、これまで食べたワサビの中でも指折りの美味しさ。

昨年、ワサビ発祥の地である静岡の有東木(うとうぎ)を訪ねて以来、夫婦共々ワサビ好きになっていたので、ぜひお土産に買って帰りたいと、仕入れている店を聞いたところ、村上社長直々に案内してくれました。

それが、湯ヶ島にある伊豆屋わさび店さんです。
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こちら、ワサビ農家の直営だそうで、訪ねると、とってきたばかりのワサビを洗ったり、葉を剪定したりの作業の真っ最中。新鮮な生ワサビが山のように積まれている光景は圧巻でした。
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さて、お目当の生ワサビ。

伊豆の専門店のワサビは人気が高く、売り切れてしまうことも多いと聞いていたので心配しましたが、S・MLとサイズごとに10本くらいずつ残っていました。

ただし、もっとも大きいLLサイズは、わずか2本!

やはり大きいものほど人気、あるいは数が少ないのでしょう。

伊豆にもそうそう来れないので、思わず、

「これ、一番大きいの、2本ください!」

と買い占めてしまいました(笑)。
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写真は買い占めた後(笑)

それにしても、安い!

茎も入れれば15センチはあろうかという特大サイズで、なんと1本900円!
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これぐらいだと普通、2,000円以上します。

Sサイズは500円なのですが、同じサイズの生ワサビが、三島駅の売店では1,500円で売られていましたから、どれくらいお得なのかわかります。

***

さて、そんな湯ヶ島温泉・落合楼村上ご用達、伊豆屋わさび店の極上ワサビを、有東木で買った自慢のステンレス製ワサビおろし「サメ吉」(名前が可愛い笑)でスリスリし、刺身やお正月の残りのローストビーフなどにつけて楽しんでいました。
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すると、ツアーにも同行して私のワサビ狂いっぷりを見ていたニッポン旅マガジン主宰のSさんから「ワサビおろしはやっぱり鮫皮に限る。普通は本鮫だけど、一流の寿司屋や料亭はコロ鮫の皮しか使わない。両方持ってるけど、いる?」とのメール。

「くださいください!」

と即答したのはいうまでもありません。

さて、後日届いたのがこの2つ。

一つは、よく和食店などで見る、長治郎の「本鮫」の皮のワサビおろし。
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表面のブツブツは丸くて滑らかに見えるのですが、手で触ると適度な引っかかりがあります。
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もう一つが、これぞ「コロ鮫」の皮を使ったワサビおろし。
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皮の突起の細かさが、見ただけで違います。
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色も、本来この色なのだとか。

触ってみると、ザラザラとして、ちょっと目の荒い紙ヤスリのよう。

こちらのサイトに、コロ鮫の写真が乗っているのですが、鮫というよりエイとかカレイに似ていますね。確かに色も茶色がかっています。

鮫の種類が違うだけで、こんなに見た目が違うとは驚きでした。

では、味の方は?

ステンレス製も含めた3種類を、おろし比べて見ました。

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まずは、ステンレス製の「カメ吉」。
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メーカーのTSUBOEは、燕三条の金物メーカー。

無数の小さな刃が鮫肌風にギザギサに配列してあります。

さて、おろし心地はというと、さほど力を入れずとも、ガリガリとが面白いようにおろせます。

約50回、円を描くように回して、この量がおろせました。


次は、本鮫のワサビおろし。
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ステンレス製より摩擦が弱いので、おろしている感覚は”あれ、おろせないなあ”と思うのですが、気づけば結構な量がおろせています。ステンレス製と比べても、遜色ないのでは。

でも、繊維質の感じは全く違いますね。

本鮫皮の方がクリーミーです。


さて、コロ鮫の皮の方。

これはもう、おろしている時から、全然違う感触!
前の2つが、「がリッ、ガリッ』だとすると、こっちは「シャリッ、シャリッ」。
滑らかさも段違いです。
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ただ、量をおろせない。

同じ回数で、たったこれっぽちです。


3種類のワサビおろしでおろしたワサビ。
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わかりづらいので、お盆に並べて見ました。
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左から、ステンレス、本鮫皮、コロ鮫皮。

撮影がうまく行かなかったのでわかりづらいですが、ステンレスと本鮫は同じくらいの量がすりおろせました。コロ鮫は両者の半分の量です。

質感は、ステンレスの方が、ざらっとした感じで、鮫皮の方が滑らかなのは、見た目でもはっきりわかります。

で、肝心の味ですが、左から右へ行くほど、甘く感じました。

特にコロ鮫皮は、辛くないじゃん!と思ったくらいですが、後から遅れて辛味がツーンときました。

ステンレスは、ガツーンとくる辛さ。繊維質も若干あるので、ワサビのワイルドな風味を楽しみたい人はこちらがいいでしょう。

本鮫皮は、ステンスレスとコロ鮫の中間。滑らかさはコロ鮫と比べてしまうとどうしても粗いですが、量が結構おろせるので便利。見た目も綺麗だし、多くの店で使われているのは納得です。

コロ鮫皮は別格ですね。滑らかさ、おろしている感触、香りも一番立っていました。一流の寿司屋や料亭で使われているのも納得です。

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さて、3つ比べてみて思ったのは、

コロ鮫皮が質的的には一番ですが、見た目がちょっと綺麗でないのと(僕はこういう方が好きですが)、量がなかなかおろせないので、一般的ではないでしょう。値段も、ネットで出てこないのでわかりませんが、相当すると思われますし、そもそも手に入るのかどうか……。(その後、Sさんから聞いたところでは、これは伊豆の名店・浅田わさび店の製で、今はコロ鮫皮不足で非売品とか。合羽橋あたりでは、8000円はくだらないとかなんとか……)

ステンレスは手軽で量をすりおろせますが、やはり鮫皮のクリーミーさを知ってしまうと、ちょっと物足りません。

そう考えると、本鮫皮がベターなのかな。
ネット通販でも買えますし。
ただ、使った後は水洗いし、すぐ乾かして置かないと、木が歪んでしまって、皮が剥がれてしまうそうなので、ちょっとお手入れが大変。

なので、

普段はステンレスのカメ吉、お客さんが来た時は本鮫皮の長次郎

というハイブリッドな使い方がよろしいかと。

そしてコロ鮫は、よっぽどいい刺身が手に入った時の”勝負おろし”として、大事にしていきたいと思います。

Sさん、本当にありがとうございました!


最後に、伊豆屋わさび店でもらったパンフレットにあった、「ワサビのおろし方」をご紹介します。


〈ワサビのおろし方〉

1 茎を取る(ワサは茎に近いほど組織が新しいため、風味が良いそう。茎を切り離し、そこから皮ごとすりおろすといいそうです)

2、すりおろす(円を描くように優しくすり下ろすと、辛味と粘りが”増す”そう。逆に強くすると辛くなると思ってました)

3、すぐ食べる(揮発性が強いので、時間がたつと辛味が飛んでしまうそう。食べる直前にすりおろすのがいいそうです)


以上。

ぜひ皆さんも、生ワサビ、挑戦してみてください!