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日本を代表する自然主義作家、島崎藤村ゆかりの長野県「小諸(こもろ)」を旅する取材ツアー。

世にも珍しい"穴城"の跡地である「懐古園」をぶらりした後は、同じ敷地内にある「小諸市動物園」に立ち寄りました。

こちら、長野県最古の動物園として知られています。

開園は大正15年4月20日。

島崎藤村が小諸にいたのは明治時代ですから、この動物園に来たことはないはずですが、大正15年といえば91年前。

相当古いことは間違いないです。

ちなみに、日本最古の動物園は、明治15年に開園した 「上野動物園」。

……やっぱりメジャーな動物園は歴史も違いますな。

さて、この小諸市動物園は、なんともひなびた、味わい深い動物園です。 

入り口はこんな感じ。
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思いっきり逆光で真っ暗です。すみません。

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今日はペンギンのお食事タイムと、ライオンのもぐもぐタイムがあるようです。

最初に出迎えてくれた動物は……犬?
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といってもただの犬じゃあ、あーりませんよ(古いか)。
川上犬の「さくら」。
長野県の川上村の土着種だそうです。
川上犬は、古くから地元で猟犬として飼われていましたが、戦後の食糧難などで血統が絶えそうになり、信州川上犬保存会により保護育成されているそうで、長野県の天然記念物です。
ニホンオオカミの血が流れているそうですが、のんびりした顔つき、そんな風には見えませんねえ。

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ここは鳥のエリア。右側の鳥小屋に、インドクジャクやニホンキジなどの鳥類がいます。

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こちらがペンギンコーナー

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やっぱペンギンは可愛いですな

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アジを流しそうめんのようにして食べさせる「流しアジ」が名物のようですが、今年はすでに終わったそうです。やっぱり夏の風物詩なんですかね。

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冬の季節は「もぐもぐぺたぺたタイム」。
いわゆるペンギンの行進とエサやりですが、行進のほうは鳥インフルエンザの影響で中止。

今日は普通のエサやりのみです。

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エサ来た〜!

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アジですかね。小ぶりですが、焼いたら美味しそう。

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ちょーだい、ちょーだいと、フライングするやつも。
ペンギンにもいるんだねえ、こういうやつ。

ペンギンが欲望のままエサをむさぼり食う様を堪能した後、

次のライオンのエサやりまで、しばし休憩。

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休憩所の子供用の乗り物が、なんとも渋い…。

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ライオンの檻の前でたそがれてる女性がいると思ったら、同行した美人ブロガーのNさんじゃないですか。

この檻にいるのが、小諸市動物園のアイドル「ナナちゃん」。
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2001年12月生まれということですから、ちょうど15歳。
人間でいうと80歳くらいですかね。
4歳の時に多摩動物園から来たそうです。

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これ、ナナちゃんの爪とヒゲ。
爪には関節があって、内側にくいっと曲がります。
捕まえた獲物を逃がさないためでしょうねえ。

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檻にはこんな動物が。やっぱり危険動物なんです。

このナナちゃん、全国的な有名人。

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作家の村上春樹さんが、自身のウェブサイトで、「寂しくなると小諸市動物園のナナを思い出す」と紹介したことで、ファンの聖地となっているのです。

檻の横に掲示されていた新聞記事によると、

村上さんは、子どもができないまま43歳になったという女性の「寂しい」という悩みに、自身もナナの檻の前で長い時間を過ごしたとして、

「ライオンが一人きりで小諸の動物園にいるというのは、ずいぶん寂しいことなんだろなと思いました。たぶん文化的にもあわないだろうし。でもとても優しい目をしているんですよね。ななちゃんのことを思い出しましょう」

とアドバイスしています。

すごく普通のことなんだけど、一流作家がいうと、なんだかありがたく感じますね。

このサイトは公開終了していますが、やりとりの一部は書籍「村上さんのところ」(新潮社)に収録されているそうです。

ナナは2004年に弟のカイと一緒に多摩動物園から来ましたが、カイは2014年に死亡。
その後、一人っきりで過ごしています。

そう思うと、確かに寂しく見えますね。

ずーっと檻の中でウロウロしてますが、落ち着かないのでしょうか。?

そんなナナと、自分自身とを重ね合わせて見る人は多いようで、 中には閉園の16時半まで半日ちかく檻の前を離れない人や、 「一緒に頑張ろうね」と声をかける女性もいるそう。

Nさん。大丈夫?


そのナナちゃんのエサやりが、いよいよ始まります。

エサはこれ!
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うわー、さすが肉食獣。リアルだわ〜。

食べてる様子はこちら (←動画)


がっつり食べてますなー。

さっきから落ち着かなかったのは、エサの時間が待ちどうしかっただけみたい。

動物園の脇には、誰もいない児童遊園が。
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これもまた、寂しげな情景です。


でも、

「寂しい」

なんて、人間だけの感情なのかも。

つまり、気のせい、ってこと。

そう考えると、気が楽になるかもしれませんが、

そんな風に割り切ってしまうのも、ちょっと寂しいですよねえ。

(つづく)